連載 私のフィールドノート・5
シャシャラ・シャラシャラ
星野 晋
1
1山口大学医学部・文化人類学(医療人類学)
pp.453
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662100084
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「シャシャラ・シャラシャラ・シャシャム・シャラ,シャラム・シャラシャラ・シャシャム・シャラ」
これは前回紹介した福島県の調査実習を行ったときに出会った糸ほぐしのおまじないである。もつれた糸をほどくときに,3回唱えるとうまくいくそうである。糸のもつれは心をいらだたせる。いらだつと糸はいっそうほどけにくくなる。そこで一呼吸おくように,こうしたまじないがつぶやかれたのであろう。
大学院時代,私の研究テーマは,神憑って占い・祈祷などを行うシャーマンについてであった。いまなお日本各地に残存するシャーマンたちが,人々の,いったいどのような思いに応えているのかということである。しかし残念ながら,実習先にシャーマンはいなかった。そこで一般に人々がシャーマンを頼るきっかけとなる不幸や心配事について,調査地ではどのように理解され対応してきたかについて調べようと思い立った。そうした不幸や心配事の中心は,やはり病であった。
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