連載 私のフィールドノート・6
オガミヤさん
星野 晋
1
1山口大学医学部・文化人類学(医療人類学)
pp.555
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662100107
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「オガミヤさん」と聞くと,なにやらあやしげな宗教家が一心不乱に祈祷しているところを思い浮かべられるかもしれない。オガミヤの調査を始める前には私もそのように思っていた。しかし,調査で出会った彼らは,何のことはない,近所のおっちゃん,おばちゃんだった。たしかに神憑(かみがか)りの現場は鬼気迫るものがあるが,むしろ普段のそのあまりの普通さに驚かされた。
私個人の研究における最初の調査地は,愛媛県の南予地方のとある町であった。四国は石鎚山の山岳信仰や八十八カ所参りなど,民間医療にも関連深い宗教的習俗が色濃く残っており,15年前にはオガミヤがまだそこここにいた。宇和島の郷土史家の方から紹介いただいた人脈をつてに,町から町へ訪ねて歩き,現役のオガミヤが4名もいるその町にたどり着いた。
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