連載 私のフィールドノート・9
暑さに緑豆
星野 晋
1
1山口大学医学部・文化人類学(医療人類学)
pp.881
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662100164
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台湾は北回帰線をはさんで,北部は亜熱帯,南部は熱帯である。実は私は暑いのがとにかく苦手なのだ。それなのになぜこの地をフィールドに選んだかといえば,それは食い物がうまいからである。もちろん,学部学生時代に台湾を訪れたときに見たシャーマンのど派手な憑依のインパクト,近代と伝統が入り混じった近未来的な光景などが,人類学徒としての私の好奇心を刺激し,フィールドワークのイメージがふくらんでいったということはある。でも白状します。食い物につられました。私は食いしん坊です。
さて,めちゃくちゃ暑い台湾の夏,誰かの家を訪ねたら,冷やした緑豆のシロップ漬けが出されることがある。これが,なかなかさわやかな味で,美味しい。で,食べていると,「緑豆は日射病や熱射病にいい」という説明がつく。日本の甘党の店でも出てきそうなデザートであるが,それが小豆ではなく緑豆であることがミソなのだ。
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