連載 私のフィールドノート・11
歩く
星野 晋
1
1山口大学医学部・文化人類学(医療人類学)
pp.1106-1107
発行日 2003年11月1日
Published Date 2003/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662100206
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40代に入ったころから,そろそろ健康に不安を感じはじめた私であるが,ひとつ自慢できることがある。それは骨密度が20代前半の数値ということである。子どものころから大の牛乳好きであったことに加えて,歩くのが好きだったこと,とにかくひたすら歩いたことがよかったのだと思う。そしてそんな歩き好きだったから,いまでもフィールドワーカーをやっていられる。
フィールドワーカーはとにかくよく歩く。直接目的地に行って直接的なインタビューを連ねるのではわからない,総合的な情報収集をするには,やはり歩くスピードがいい。車で乗りつけて,たちまち玄関のチャイムをならすのではなく,少し周囲を歩き回って,そこに暮らす人たちの生活を感じ取ってみる。そこに暮らす自分を想像してみる。そうやって生活の文脈に人びとをおいてみる。それはゆっくり歩きながらでないと見えてこないことである。
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