連載 現場で使える調査法・1【新連載】
なぜ現場で調査を行うのか
西田 茂樹
1
1国立保健医療科学院人材育成部
pp.450-452
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662100083
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現場が調査研究を行う意味
学会に参加したときに,保健所長さんが「うちの保健所から今年は5題発表をした」などと自慢げにお話しされているのを耳にしたりすることがあります。そして,その演題を聞いたり,みたりすると,なぜ保健所でその内容の調査を行ったのかよくわらないことがあります。わからないのは,調査研究の内容が「どのように保健所の行政に役立つのか」「どのように住民のためになるのか」が理解できない点です。
大学や研究機関で行われる調査研究は,直接,行政や住民に役立たなくても問題はありません。もちろん大学などでも,究極的には公衆衛生の向上をめざして調査研究は行われるべきでしょうが,当面は新しい学問上の発見があることが重要視されます。これに対して,保健所や市町村などの行政機関やその職員が実施する調査研究は,あたり前のことなのですが,「調査結果が行政に役立つこと」,つまり「調査結果が住民のために役立つこと」が必要です。もしも,そうでないとするなら,なぜ保健所などが調査研究を実施する必要があるのでしょうか。結果を公衆衛生行政に生かすために調査研究が行われるのでなければ,行政機関が調査研究を行う意味はないと考えます。別の言い方をすれば,行政機関では,学会などの学術集会で発表することや,学術雑誌に掲載することのみを目的として調査研究を実施してはいけないということです。
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