ベッドサイドの看護
脳性麻痺児の排泄自立への援助
井上 ウメ子
1
1神奈川県立ゆうかり園
pp.376-379
発行日 1977年4月1日
Published Date 1977/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661922641
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Ⅰ.患者について
排泄の自立と独立歩行が可能となったS君は昭和50年5月退園した.その2か月前までは,歩行は全くできず,移動は仰臥位のままで足で床をけって行い,衣服の着脱は全介助を必要とし,言葉は数語が話せるだけで,殊に排泄については,教えることはできるが和式の便所やオマルを怖がっておむつをしていた.S君は昭和46年2月,体重2500gで出生した.1歳6か月になっても歩くことができず,近医に歩行器を使うようにいわれたが,2歳6か月になっても歩けるようにならなかった.脳性麻痺と診断されたのはこのときであった.そして,4歳になっても歩けなかった.
S君の父親は,新聞配達を職業とし,収入は8-9万円で家計は苦しかった.朝は早い仕事であるのにS君が毎夜ぐずるので眠れず,S君を施設に入れたいと考えていた.施設に入れれば歩けるようになるとも考えていたようだ.母親はS君を施設に預けてパートで働きたいと考えていた.S君に対してはトイレを怖がるからとおむつを使用し,牛乳を入れた哺乳びんを持たせるなど,乳児的扱いをしていた.5歳の兄は保育園に通っていた.
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