特集 時代の鏡としてのうつ病
一般内科におけるうつ病患者の看護—燃えつき症候群の外来ケアを通して
山崎 美佐子
1
1北九州市立小倉病院
pp.43-47
発行日 1983年1月1日
Published Date 1983/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661919756
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はじめに
現代社会は人類がかつて経験したことのないほどの文明をほこっている.高層ビル,高速道路,新幹線,ジェット機,そしてインド洋のマグロや南米のバナナが食卓にのる.しかし,このような現代文明の成果は本当に人類に幸福をもたらしているのだろうか.男は通勤に1時間以上かけ,会社では激しい競争を切り抜け,夜はネオン街をさまよう.女は文明の利器の電化製品を用い,“うさぎ小屋”の家事をすませてしまえばすることはない.孤独の中でテレビ画面に夢を追い,子供の教育に力を入れる.
進んだ文明の中で,人間の自己疎外が進む.人々は自己を失い,労働や生産が自己目的ではなくなり,時間や空間が彼らを超越してゆく.労働はただ賃金を得るためだけのものとなるが,なおも人々は労働の中に,生産の中に自己を見いだそうとする.人間と動物の大きな違いは,自己実現の有無である.現代社会の中で,人々は自己実現の意志すら失ってゆく.そして‘うつ’の時が始まる.
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