特集 患者の死をみまもって
死を目前にした患者・家族へのかかわり—看護婦の役割
多田 盛世
1
1稲田登戸病院内科病棟
pp.260-264
発行日 1980年3月1日
Published Date 1980/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918902
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はじめに
目覚ましい医学の進歩の中でも“死”は逃れることのできないものである.‘いかに人間が人間らしく,最後の瞬間まで安楽に生きられるよう援助していくか’‘限られた生へ,どれだけ援助できるか’看護者が常に念頭におかなければならない問題である.
しかし,終末期になればなるほど,毎日の看護が手順化され,観察に終始し,治療を優先させ患者のニードが二の次になってしまう.また,家族に病状の説明をする場合,たとえ予後不良と説明しても,家族にその病状の重さが伝わらない.そして何よりも問題となることは,看護者側の患者と家族からの“逃げ”である.例えば,患者から痛みの訴えがあった時,まず考えることは注射である.その場にとどまる勇気があったなら,注射よりもっと効果のある方法で苦痛を和らげることができるかもしれない.家族が付き添っていればなおさら,看護者側が当然しなければならない精神的な苦痛に対する援助までも,家族まかせにしてしまう結果となっている.
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