特集 患者の死をみまもって
死を目前にした人に導かれて
藤田 郁子
1
1専門学校三育学院カレッジ専門課程看護学科
pp.250-252
発行日 1980年3月1日
Published Date 1980/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918899
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Kさんが2度目に入院したのは,癌のために胃切除をして3か月後の初夏であった.食欲不振と腹部膨満感が主訴であった.‘食べると,このあたりが苦しくなるんですよ’と,ふくらんだお腹をさすった.それは明らかに,腹水のための膨満であった.顔色はどす黒くなっており,手術後いくらか回復したかにみえた大きな体格も,すっかり影がうすくなっている.
前回の入院で手術をしたあと,Kさんには胃潰瘍だと告げられた.しかし事実は胃癌で,しかも,周りのリンパ腺にもかなりの転移が認められた.このことはKさんの奥さんに報告されていた.ところがどういうわけか,2度目の入院後,その奥さんがあまり姿をみせない.たまに来てもすぐに帰ってしまうという状態であった.
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