第5病棟の彼と彼女たち・6
鍵(1)
前浜 政子
1
1国立療養所長島愛生園精神科病棟
pp.741-743
発行日 1976年7月1日
Published Date 1976/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917929
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‘開放管理制’について
‘僕は大野連太郎’君は,もちろんなにも言えないので,読者の方から寄せられたご意見に対し大野君の代弁をしよう.それは大野君が最も言いたい切実な言葉であるはずですから.‘なぜ連ちゃんに鍵が必要か’──.私は声をあげて答えます.‘ありがとう,その声の聞かれる日を連ちゃんのため,いえ,5病棟のために待っていました.第5病棟の彼と彼女たちは一貫して“なぜ鍵が必要なの”と訴え続けていたのです.訴えさせていたのです.鍵は内から外に向かって開けるより,外から内に向かって開ける事が難しいのです.開放(解放)とはそんなものではないでしょうか.外からの愛情と理解こそ,彼と彼女たちを開放(人間に使用する言葉としては適切でないような気がするが,精神科では鍵をさすので開放とつかわれる)する最も大切な条件です.内ではそれを待っています’と.
開放管理制──昔から精神病院では,病棟に鍵をかけ,窓は格子をつけて特別の場合のほかは,患者を外へ出られなくしておく方法がとられてきた.
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