特集2 看護学生論文―入選エッセイ・論文の発表
エッセイ部門
講評●「気づき」こそ資質向上の鍵
柳田 邦男
pp.675-677
発行日 2008年8月25日
Published Date 2008/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100977
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■受賞を決めたいくつかの要素
今年のエッセイ賞の候補作として編集部が選んだ10点のうち,私が受賞作にふさわしい作品として最後に残したのは,佐藤美幸さんの「共感的態度で」と大舘千恵さんの「Nさんの宝箱」だった。どちらにしようか迷ったが,テーマの明確さ,壁にぶつかった時の問題意識の持ち方,問題を乗り越えていく方法の着眼と臨床実践,思索の深まりと学んだことの普遍性,患者さんの反応からの検証,文章の説得力と構成の良さ,といった,私が選考のポイントにしている要素を念頭に置きながら再読した結果,佐藤さんの作品を受賞作に決めた。後で編集室に聞くと,編集室内でも受賞作は佐藤さんか大舘さんのどちらかの作品だろうと予想していたという。
もちろん紙数の限られたエッセイだから,私が選考の要素にしている項目をすべて満たさなければならないということではない。テーマや素材によっては,ワンポイントに絞って読後に強く心に残るという作品のほうがよい場合もある。《いい話だな》とか,《大事なことを象徴的に語っているなあ》とか,《世の中にはこんな人もいるのか》といった印象を深く心に刻むような作品であれば,十分に優れたエッセイになっているといえる。
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