連載 世界の感受の只中で・12
安楽死・1
天田 城介
1
1立命館大学大学院先端総合学術研究科
pp.350-354
発行日 2008年4月1日
Published Date 2008/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101243
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「周りの人々や家族,国家などが背負うことになる経済と道徳の面の負担でも,精神的に死せる者だから誰でもみな同じというわけではない.一番僅少で済むのは,どのような性質であれともかく脳軟化症の場合である.この場合,完全なる精神的な死が語られた瞬間から死にいたるまでの生存期間は,ふつう(せいぜい)二~三年にすぎない.それよりもわずかに長い生存期間が見られるのは,老人性の痴呆の場合である.青年期に発症した精神廃疾者では,事情によってはその状態が二〇年も三〇年も続くことがある.他方,初期の脳変質に起因する極度知的障害[真性白痴](Vollidiotie)の場合には,生存とそれゆえに必要な他者による世話は二世代かそれ以上にわたることがある./とするならば,経済面に関するかぎり,極度知的障害者(Vollidiotie)こそは,完全なる精神的な死のすべての前提条件を一番に満たすと同時に,誰にとっても最も重荷となる連中(Existenz)となろう.」(Binding & Hoche 1920=2001:77/傍点原文)
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