特集 終末期患者の看護
ベッドサイドから
生との闘いの苦悩
中島 紀子
1
1放射線医学総合研究所
pp.19-21
発行日 1968年11月1日
Published Date 1968/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914183
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入院,退院,再入院,再々入院,そのたびに患者の容態は悪化し,癌患者特有の顔色顔貌をなし,初回独歩,次回車椅子,車椅子がストレッチャーに変わって病院の玄関を入って来る。ストレッチャーで運ばれる患者の顔を一見し,悪化した患者を見るたびに胸苦しさを感じる。いけない!!と自分を諫め患者の容態観察に神経を集中させる。すがるように「またお願いしますよ」と差しのべられた細い手をにぎりしめ「元気をお出し下さいね,きっとすぐ歩けるようになりますよ!!」いつもこの空々しい言葉で患者を励まし受け入れている私たち,この末期の重症患者を看護して日頃感じていることを記したいと思う。
当院に再入院または再々入院し,重症に至った患者の多くには,入院時医師が回復不可能であることを家族に話し,医療チームおよび家族が患者に対し最善を尽くすよう話合う。不幸にして死亡した場合には原因追求,医学発展のためを説き家族より解剖の承諾を得るため,家族の理解(あきらめの心境も多い)協力によって昨年までの当院での解剖率は90%以上である。この点においては他の急変による死亡ケースとはやや異なると思われる。
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