特集 リサーチエビデンスを看護ケアに活かす ~今とこれから~
食の苦悩
中西 絵里香
1
Erika NAKANISHI
1
1東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野博士後期課程
pp.732-735
発行日 2023年11月1日
Published Date 2023/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango28_732
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食の苦悩に対する看護支援の概説
食の苦悩(eating related distress:ERD)とは,患者が食べられないことによる体重減少,筋力の低下,さらには,外見の変化などにより,患者自身とまわりの家族に生じる苦悩を指す.食の苦悩によりつらい経験をしている悪液質を伴う進行がん患者が多いことが明らかとなりつつあり1),食の苦悩とがん悪液質はほぼセットの位置づけで考えられている.がん悪液質とは「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず,進行性の機能障害にいたり脂肪量の減少があるか否かにかかわらず骨格筋の量が持続的に減少する特徴をもつ多因子性の症候群」である2,3).なお,がん患者の50~80%ががん悪液質の症状を発症する4).
日本がんサポーティブケア学会ほか監修の『がん悪液質ハンドブック』はあるものの,食の苦悩をメインテーマとして扱ったガイドラインは国内外において現在存在しない.がん悪液質における診療ガイドラインとしては,2020年の米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)5),2021年の欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology:ESMO)6)で食の苦悩について触れられており,食の苦悩に対する心理的支援が大切だといわれている.今後,食の苦悩について国内外で認知度が高まり,食の苦悩に関するガイドラインが作成されることで,多くの患者とまわりの家族の食の苦悩によるつらさが軽減されることが期待される.
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