看護婦さんへの手紙
職業と生活
佐多 稻子
pp.13
発行日 1965年2月1日
Published Date 1965/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913494
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私たちが生涯を,人間として生きてゆくということはどういうことなのであろう。一般的にいって,ひとりの人間は何らかの仕事を持ち,社会の一員としての自覚で社会そのものに参加してゆきつつ,結婚をし,子どもを育て,それらを通して未来につながってゆく,ということだろうとおもう。が,この根本的な生き方が,女性にとっても自分のものになってきたのはまだこの頃のことである。
昔から女性も働きとおしてきたのにちがいないが,仕事そのものに社会性が認められていなかった。職業となって確立して,婦人たちは社会に出たのだが,その歴史が浅いから,今日でも,婦人たちは,職業か結婚か,とその問題の不統一に迷う。婦人が職業を一生のものにしようと決心したとき,結婚は半ばあきらめねばならないような現象が実際にある。これは,おかしなことなのにちがいない。が,このおかしなことが,今,婦人にとっていちばん大きな問題なのである。
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