講座
職業教育のための生活指導
鈴木 敦省
1
1立教大学
pp.13-18
発行日 1960年7月15日
Published Date 1960/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911123
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パースナリティという「成功への鍵」
「学歴,国家試験,免許状」という一連の専門技術者となるための適格条件は,時代の進歩と共に次第に高く要求されるようになつて来た。こうした近代社会では,およそこれらの所要条件をみたすためにわれわれは若い人々を長期間,学校教育や専門の養成課程の中に釘付けにしているのである。技術革新に対決するための職業準備教育は市民的教養と一般教育と更に職業教育とを要求し,三者の統合過程においてより有能な技術者を育てあげようとするのである。だが学院での試験や学業成績に直接あらわれてこない何かがあつて,これが成功への鍵であるとしたらこれこそ私達が最も大切にし育てあげなければならないところのものだ。この成功への鍵はどの専門職の国家試験でも屡々見落されがちであつて,しかも現実の職場へ出てかなりの期間を経たときにはじめて露呈してくるところのものである。
この点についてフランスの精神医学の専門家であるシャルル・プロボォはこんなことを言つているので紹介しておこう。彼は海軍省の応用心理学部長でもあることをおことわりしておく。「社会構造が複雑になるにつれていろいろな試験・競争・免状・証明・称号といつたものが重なりあい,補いあつて,それがいよいよ恰好な篩の役を果すようになつてくる。もつとも,これらにも採るべきものがあるといえるし,また,これだけが唯一の選び方(人材,選抜の方法)となる場合もある。
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