特集 生活習慣と健康
職業別にみた生活習慣
川上 憲人
1
1岐阜大学医学部公衆衛生学教室
pp.844-847
発行日 1994年12月15日
Published Date 1994/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901160
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◆はじめに
主要な成人病の発症や主観的な健康に,栄養,運動,休養などの日常の生活習慣が大きな影響を与えることが明らかとなり,これに基づいた健康づくり戦略が展開されるようになって久しい.職域においてもトータルヘルスプラン(THP)によって運動を中心とした健康づくりが熱心に進められている.
職業別に生活習慣を分析することには,2つの意義があると思われる.第1に,勤労者の健康状態には職種によって大きな差がある1).成人病に限っても,事務職では高コレステロール血症が,営業職や中間管理職では胃・十二指腸潰瘍が,管理職および運輸職では糖尿病が多い.こうした職種間の健康状態の差異には,職種ごとの生活習慣の差が強く影響していると推測される.職種別の生活習慣の特徴を把握し,これに基づいて職種ごとに変容を促すべき主要日標となる生活習慣を設定することで,効率的な健康づくり活動が実施できる.第2に,禁煙教室など望ましい生活習慣への変容を援助しようとする場面で,仕事上のつきあいやストレスなどが行動変容の困難さや失敗の原因となることがしばしば報告される.生活習慣の形成および維持に及ぼす職業性因子の影響を理解することは,健康づくり活動を進める上で重要である.
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