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はじめに
近年,世間一般へのノーマライゼーションの考え方の普及により障害者雇用促進などに関する法律も整備されている.また,情報処理機器や通信ネットワークの普及や進歩も目覚しく,身体障害者が職業復帰しやすい物理的環境は整ってきている.
その反面,近年は長引く不況やグローバル化などのビジネス環境の大きな変化により,激化した競争社会のなかで企業は効率を重視するようになっている.さらに,企業は生産効率を高めるために,新卒採用の抑制と中高年者のリストラにより人員削減を進め,残った社員が多大な仕事量をこなさなければならなくなり,長時間労働を強いられている.このような社会では健常者でも健康を維持しながら働くには困難な職場環境になってきているのも事実である.
また,厚生労働省が発表している2009年6月1日現在の障害者の雇用状況をみても,国の公的機関では97.4%が法定雇用率を達成(実雇用率2.17%)しているのに対して,法定雇用率を達成している民間企業は45.5%(実雇用率1.63%)と,公的機関と競争の激しい民間企業との障害者雇用の格差は大きい1). 2010年7月より短時間労働が障害者雇用率制度の対象となったものの,障害者雇用納付金制度の対象事業主が常時雇用労働者201人以上の中小企業まで拡大され,さらに除外率も下げられており,障害者が働きやすい制度になった反面,公的機関と民間企業の障害者雇用率の格差は広がっていくと思われる.
このような障害者にとって非常に厳しい現状にあって,脊髄損傷(以下,脊損)者が職業復帰をし,定年まで働いていくためにはどのような点に注意すればよいのかを,本稿では具体的な事例を交えながら考察した.
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