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はじめに
視覚障害者や聴覚障害者の社会・職業生活について述べる場合,対象となる視覚・聴覚障害者の範囲を定め,明確に定義しておく必要がある.視覚・聴覚障害者の範囲は,教育の領域では教育的配慮の必要性,福祉の領域では生活の不自由さ等を考慮して定められている.この障害者の社会生活,職業生活を述べる場合は,身体障害者福祉法に定める視覚・聴覚障害者の定義が妥当と思われるので,ここでは,この範囲の視覚・聴覚障害者を中心に論じる.
身体障害者福祉法において,視覚障害者は次のように定められている.
①両眼の視力(万国式視力表によって測ったものをいい,屈折異常がある者については,矯正視力について測ったものをいう.以下,同じ)がそれぞれ0.1以下のもの
②1眼の視力が0.02以下,他眼の視力が0.6以下のもの
③両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの
④両眼による視野の二分の一以上が欠けているもの
また,聴覚障害者は,次のように定められている.
①両耳の聴力レベルがそれぞれ70dB以上のもの
②一耳の聴力レベルが90dB以上,他耳の聴力レベルが50dB以上のもの
③両耳による普通話声の最良語音明瞭度が50%以下のもの
この視覚・聴覚障害者の定義に基づいて,ほぼ5年ごとに身体障害児・者の実態調査が実施されている.1991(平成3)年11月に実施された身体障害児・者実態調査によると,表1に示すように在宅の18歳以上の視覚障害者は35万3千人,18歳未満の視覚障害児は3,900人と推定されている.また,在宅の18歳以上の聴覚障害者は35万8千人,18歳未満の聴覚障害児は11,200人とされている.
この障害児・者の数を調査年度毎の推移でみると,視覚障害児と聴覚障害児の数は調査年度毎に減少しているが,18歳以上の視覚障害者,聴覚障害者の数は増加している.また,この在宅の18歳以上の視覚障害者と聴覚障害者の年齢分布を見ると,65歳以上が視覚障害者で54.1%,聴覚障害者が48.9%と約半数が老人福祉の対象となる65歳以上である.さらに,障害の発生時期を見ると,18歳以降に視覚障害者になった者は64.5%,聴覚障害者になった者は48.7%であり,人生の途中で障害者になった割合が高くなっている.
このことから,わが国の視覚・聴覚障害者は,18歳未満の児童は減少し,18歳以上の成人は増加する傾向にあり,これは欧米諸国にも共通している.さらに,視覚・聴覚障害者の約半数が65歳以上であり,人生の途中で視覚・聴覚障害者となった者が多いことがわかる.
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