特集 食欲
食欲のない患者と献立
宮川 哲子
1
1虎ノ門病院栄養科
pp.23-28
発行日 1958年8月15日
Published Date 1958/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910661
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
食欲とは空腹感の存在を条件として,五感器のような神経感覚並に精神的連想などを伴つて食物を食べたいという欲望が起ることをいいます。食欲の促進には嗜好素が重要な役割をなすもので例えば食物のもつ香味などは嗜好素で食欲を進める働をもつています。然し美味しそうな食物の香味でも満腹時には食欲を寧ろ減ずる傾向さえもつています。又食欲は過労した時精神的に激しい衝動をうけた時,精神的に極端に興奮したとき,代謝機能が低下した時などに減退するものであり,又発熱,胃腸疾患,苦痛を伴う疾患などでも食欲の低下を来します。又嗜好は主観的のものですから人によつて多少その傾向を異にしています。同一人においても精神状態や精神的条件によつて違つて来ることがあり,疾病時には健康時と違つた嗜好の傾向を示すものであります。以上述べました様に種々の原因によつて低下した食欲も種々適応した嗜好性の食品によつて或る程度増進させることも出来,又その必要も起るわけであります。食欲の増進は食餌摂取を容易にし消化吸収を助ける働をします。五感器による栄養感覚は食物の嗜好的成分によつておこされるもので,食物の香と味が最も主な影響を与えます。
嗜好素とは食物に香味を与えその嗜好的価値を高める物質で食欲を進めるのに必要な成分で,調味成分を初めとし,わさび,こせう等に含まれる香辛性成分,食物特有の香味や色素はこれに相当します。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.