特集 発生リスクをみきわめる! 褥瘡予防の知恵とワザ
典型事例に基づく褥瘡予防「誌上」プラン
②【脊髄損傷】 脊髄損傷患者の褥瘡予防
菅井 亜由美
1
1星ヶ丘厚生年金病院相談指導室
pp.235-239
発行日 2003年3月1日
Published Date 2003/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100931
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脊髄損傷患者の褥瘡の特徴
脊髄損傷患者は損傷部位により知覚運動麻痺のレベルは異なるが,麻痺領域は皮膚の血行障害や筋萎縮を起こすことが多く,皮下組織は薄く脆弱になる.
脊髄損傷患者の多くは,車椅子を使用して日常生活の自立を獲得する.1日の大半を車椅子上の同一体位で活動すると,上半身の圧力が坐骨部に集中しやすく十分な除圧が行なわれないと褥瘡発生の原因となる.なかには脊椎の湾曲や変形により坐骨の一方に圧の偏りがみられることもある.また,トランスファー時に殿部でずりながら移動したり車椅子上で体の安定を得るために殿部を前にずらす,いわゆる「仙骨座り」になり,皮下組織のズレや皮膚の摩擦が生じることも多い.これは尾骨部や仙骨部の褥瘡発生の原因にもなる.
さらに脊髄損傷患者は知覚障害があるため,褥瘡に気づいた時には深く難治性であることが多く,なかには敗血症をきたし生命にかかわることもある.
このように脊髄損傷患者の褥瘡は,通常発生する状況とは大きく異なり,社会復帰後の車椅子生活自体がリスクとなる.つまり,その活動方法の特性から,生涯にわたり常に褥瘡発生に注意を払いながら生活しなければならないという特徴がある.
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