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特集 脳を守る21世紀生命科学の展望
脳脊髄損傷と細胞移植―脊髄損傷
Cell transplantation into CNS lesions: spinal cord injury
川口 三郎
1
Saburo Kawaguchi
1
1京都大学大学院医学研究科認知行動脳科学分野
pp.39-45
発行日 2000年2月15日
Published Date 2000/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902463
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脊髄損傷によって対麻痺や四肢麻痺が起こるとの記載は,古代エジプトのパピルス文書に遡ることができるという。外傷性脊髄損傷は人類の歴史が始まって以来,その活動に伴う不可避的な産物として起こり続けてきたものであり,その悲惨な症状の救済は古くから人々の切実な関心事であった。そうした関心を背景として,脊髄伝導路が再生するか否かということは古くから研究されてきた問題である。
神経解剖学の巨星Ramón y Cajalはすでに1世紀近くも前に神経の変性と再生に関して詳細な研究を行い,この問題に対して否定的な解答を与えた。彼はその記念碑的な著書1)の中で,それを結論的に以下のように述べている。「いったん発達が終われば,軸索や樹状突起の成長と再生の泉は枯れてしまって元に戻らない。成熟した脳では神経の経路は固定されていて変更不能である。あらゆるものは死ぬことはあっても再生することはない」と。しかし,彼は中枢神経伝導路の潜在的な再生能力を否定したのではない。
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