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はじめに
クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakobu disease,以下CJD)はプリオンタンパクの異常により起こる感染性の疾患である.物忘れ・視覚障害・小脳症状などを初発症状として発症,急速に進行し,錐体路/錐体外路症状・不随運動・除皮質状態・意識障害を起こす.その後数か月で無言・無動状態となり,多くは発症後1年から数年で死亡する疾患である.日本では,1991年に最初の硬膜移植によるCJD患者が報告された.2001年に初めて狂牛病が確認され,感染牛肉を摂取することで人間にも感染の恐れがあるため,マスコミをはじめ社会の関心が高まった.しかし,それ以前にCJDは1921年から報告されており,孤発性・遺伝性・感染性に分類され,100万人に1人の割合で発症すると言われている.京都大学医学部附属病院北病棟4階では,今年度3例のCJD患者が入院しておりいずれも孤発性であった.
CJDはその他の感染症とまったく異なる新しいタイプの感染症であり,従来の滅菌法は無効である(表1).また感染経路は特定されていない.CJD患者は,初期より精神・高次脳機能障害や運動障害を呈するため,看護するうえで体液に触れる機会は多い.特に涙や唾液・気管分泌物・排泄物・体液汚染したリネンの取り扱いについて,現場に混乱がみられた.当病棟はこれまでもCJD患者を看護していたが,感染対策基準の確立には至っておらず,現在はCJDの看護経験のある看護師も少ない.私たちはある症例を看護するにあたり,感染対策基準が必要であると考え,CJDに関する資料を集め,厚生労働省クロイツフェルト・ヤコブ病診療マニュアル[改訂版]1)(以下,厚生省診療マニュアル),WHOの感染コントロールガイド2)をもとに,当院の感染コントロールチーム(以下,ICT)と話し合い,当病棟での「CJD感染対策マニュアル」(以下,マニュアル)としてまとめた.それをもとに看護を実施したので報告する.
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