特集 障害児のノーマライゼーション
親子を抱える環境をつくる—NICUでの心理臨床の経験から
永田 雅子
1
1名古屋第二赤十字病院小児科
pp.374-379
発行日 2002年5月25日
Published Date 2002/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902871
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無事に元気な子どもが生まれてくることは誰もが願っていることである。しかし,一定の割合で何らかの疾患や障害をもって生まれてくる子どもたちが存在することもまた事実である。自分の子に,何らかのリスクがあることが告げられた時,親は戸惑い,その事実を受けとめるまでに一定の時間を要することが多い。自分が今まで思い描いていた赤ちゃんを失ってしまうかのような錯覚と,赤ちゃんそして出産を心待ちにしていてくれた周囲の人への罪悪感,元気な赤ちゃんを産むことのできなかったという母親として,女性としての不全感が襲ってくる。そのときのことを「まるで足を引きずり込まれていくような感覚だった」と語ってくれた方がいる。産褥期は精神医学的にも不安定になりやすい時期でもあり,多くの人が涙もろくなったり,悲観的になったり,眠れなくなったりする。そうした時期に直面する様々な出来事は母親の心をとても揺さぶりやすい。しかし,ご両親は,ずっとそんな思いを抱えたままで子どもと向き合い,そのままずっと歩んで行くのだろうか。そうではないのだと思う。
周産期は親と子が出会う大事な時期である。NICUそしてその後のフォローアップに携わる臨床心理士として,親子が出会う周産期の現場からみえてくるものを,伝えていきたい。
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