連載 おもちゃが拓くリハビリテーションの世界・第7回
親子でつくる,手づくりおもちゃ
嶋田 英津子
pp.65-69
発行日 2017年1月15日
Published Date 2017/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200529
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はじめに
幼い頃,ときどき母がキャラメルの小さな空き箱で私にお財布を作ってくれた。
「はい,どうぞ」と手のひらに乗せてもらった感触を今でもはっきりと憶えている。
さっきまで見慣れた普通の空き箱が母の手によって魔法にかけられたように突然息をし始め,驚きと尊敬で目の前の母がまるで魔法使いのように見えた。そのお財布に絵を描いたり折り紙を貼ったりして見せに行くと母はとても喜んで「まあ,素敵!」と嬉しそうに褒めてくれた。そのたびに誇らしさで胸が一杯になり,今度はどんなふうにしようかと考えるのが楽しくてしかたがなかった。それが私のモノづくりのはじまりだったのかもしれない。
母に教わった空き箱の財布を娘に作ってあげる。目を輝かせて「色を塗ってもいい?」と聞く娘の姿と当時の私の影が重なり,心はなんとも言えない温かさで満たされる。
誰にだって我が子にとっての魔法使いになることは難しいことではない。手づくりという自分に注がれた愛情が子どもには魔法そのものなのである。母親がかけてくれる温かな魔法。
今回は具体的な手づくりおもちゃをいくつか例に挙げながら,その楽しみ方や実際に講座などで体験したこと,それがもたらす子どもへの影響などをご紹介したい。
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