特別寄稿
チンパンジー「アイ」の妊娠・出産・育児
上井 稔子
1
,
友永 雅己
2
1東京医科歯科大学医学系研究科後期健康科学
2京都大学霊長類研究所行動神経研究部門思考言語分野
pp.885-889
発行日 2000年10月25日
Published Date 2000/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902506
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アイについて
野生のチンパンジーは,「コミュニティー」と呼ばれる小さな群れを作って生活している。そしてコミュニティーごとにそれぞれの文化を持っている。たとえば道具の使い方やコミュニケーションの方法などがコミュニティーによって異なり,それぞれの文化は,コミュニティーの中で子どもが親のやり方を見て学んでいくと考えられている。
チンパンジーのアイは,1976年にアフリカで生まれ,1歳になる頃に京都大学霊長類研究所にやってきた。研究所では道具の使い方などを学ぶ代わりに,文字や数字,簡単な手話などを学んだ。現在ではそれを使ってチンパンジーに素晴らしい記憶能力があることを証明したり1),人間と簡単なコミュニケーションをとったりして,「天才チンパンジー」と呼ばれることもある。そのアイが2000年4月24日22時49分,アユムと名付けられた男の子を出産した。
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