シネマ解題 映画は楽しい考える糧[51]
「アイ・アム・レジェンド」
浅井 篤
1
1熊本大学大学院生命科学研究部生命倫理学分野
pp.775
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102299
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医学の不確実性を思い知る一作
久しぶりに怖い映画を観ました.SFホラーとしての瞬間的な恐さに加えて,医学的観点からの恐怖が後からじわぁーとやってくるのです.椅子から飛び上がるようなショック・シーン満載ですが,正確な科学的考察がなされているストーリー運びなので医科学の専門家でも十分楽しめるのではないでしょうか.鑑賞後,皆さんはさまざまな思いに囚われることになるでしょう.私は少なくとも十指に余る倫理的哲学的な疑問をもちました.こういう後を引く作品こそいい映画だと思います.
舞台は現代.クリピン博士が遺伝子工学的に,はしかウイルスに手を加えてがん治療の特効薬を作りました.1万人の患者に投与して1万人が治癒します.なんと奏効率100%.しかしその後「クリピンウイルス」は凶悪な殺人ウイルスであったことが判明します.60億人の人類のうち54億人を殺し,5億8,000万人を日光にはきわめて弱いが凶暴で人の血を求めるミュータント“ダークシーカー”に変貌させました.残りの1,200万人のみが体質的に免疫をもっており生き延びるのですが,ダークシーカーに襲われて次々に死んで行きます.3年後のニューヨークにおける生存者はロバート・ネビル博士ただ一人.
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