連載 源流への旅
子産み子育て考・23
自立へ—忌み明けから誕生祝い
宮里 和子
1
,
鎌田 久子
2
,
末光 裕子
3
,
菅沼 ひろ子
4
,
坂倉 啓夫
1国立公衆衛生院衛生看護学部
2成城大学文芸学部(民俗学)
3東京江戸川区・教育相談室
4聖母病院分娩室
pp.153-157
発行日 1987年2月25日
Published Date 1987/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207076
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はじめに
前号で述べたように,生後1週間前後のうちに伝承儀礼が集中して行なわれているのは,この時期,新生児の生命力が生理的に不安定な状態にあることと無関係ではない。人々は迷信だといわれながら貰い乳をしたり,仮名をつけては生児の霊魂の安定を願ったのであった。両親,家族,親類縁者,地域の人々,その他,生児をとりまく人々の,精神的合力の必要も,すべてこの生児の生理的状態の安定を願う儀礼であったわけである。もちろん,褥婦の身体の回復状態も祈念されたであろうが,母と子は異なった儀礼意識の上にあることが多い。母の産の忌と,生児の出生の忌の期間が異なっていることなど,母と子は別体系の儀礼意識で扱われていたといえよう。
今回は狭義の産褥期間以後から誕生祝いまでの習俗をとおして,私たちの祖先の子育ての心と知恵を探りたい。
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