連載 源流への旅
子産み子育て考・9
妊婦と食べ物
宮里 和子
1
,
鎌田 久子
2
,
坂倉 啓夫
,
末光 裕子
3
,
菅沼 ひろ子
4
1国立公衆衛生院衛生看護学部
2成城大学文芸学部(民俗学)
3東京戸川区・教育相談室
4聖母病院分娩室
pp.1065-1068
発行日 1985年12月25日
Published Date 1985/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206781
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はじめに
石原ら1)の調査結果によると,産婦人科外来において実施している妊産婦の栄養指導の内容の主なものは,体重のコントロール,妊娠中毒症,貧血つわりなどで,なかでも肥満の予防・改善の指導は,全体の約90%を占めていると報告されている。この実態は昨今の国民の栄養状態と無関係でなく,日本の食生活が「洋風化」ないし「欧米化」から「飽食の時代」に入ったことを意味している。
食べ物は母児の生命の維持や成長にとって不可欠なものであるだけでなく,美味しさ,楽しさ,満足感,人と人との絆を強めるといった文化・社会的な意味をもっていることを,私たちは大切にしなければならない。今日では,前述したような妊婦の食生活が問題になるほどであるが,昭和20年頃までの妊婦の食生活は,一言でいえぼ禁食の伝承のみ強調されていたといってよかろう。
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