連載 源流への旅
子産み子育て考・12
出産の場
宮里 和子
1
,
坂倉 啓夫
,
菅沼 ひろ子
2
,
鎌田 久子
3
,
末光 裕子
4
1国立公衆衛生院衛生看護学部
2聖母病院分娩室
3成城大学交芸学部(民俗学)
4東京江戸川区・教育相談室
pp.256-259
発行日 1986年3月25日
Published Date 1986/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206842
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§はじめに
出産の習俗において,近代におけるもっとも大きな変化は,出産の場が自宅出産から病院出産へ移行したことであろう。鹿児島県喜界島では,母子健康センターで出産しなければ,母子手帳をもらえないという極端な例もあるほどである。しかし現在70歳以上の女性にあっては,部市部居住者以外は,大部分自宅出産であった。ここでは,自宅出産の場について各地の伝承をあげて,出産にのぞみ,生児を迎える環境,あるいは産婦の精神状態をどのように扱ってきたか,出産の場の問題から考えてゆきたいと思う。
日本各地からの報告を大きく分類すると,出産の場は自宅内と自宅外の2つに大別できる。自宅内は母屋と限定し,外は,屋敷内の小屋,または公共の産小屋などの自宅外出産の場である。さらに自宅内では床上と土間の2つに分けることができる。
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