連載 周産期の母子の看護
心理社会的アプローチ・11
産婦の"危機状況"に対する援助
和田 サヨ子
1
,
新道 幸恵
2
1聖母女子短期大学
2国立公衆衛生院衛生看護学部
pp.148-152
発行日 1987年2月25日
Published Date 1987/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207075
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"母親らしさ"の発達をうながす出産体験──危機の予防と回避──
自己概念は,特に重要な他者との相互作用によって発達するといわれる。過去の生活歴のなかで形成されてきた女性としての自己概念は,妊娠・出産を契機に母親概念をとり込んでさらに発達する。
ドイッチェ1)は,出産体験における"仕事を完遂したことについての永続的な誇り"を母性の貴重な構成要素の1つにあげている。正常かつ自然な経過で分娩が進行し,過度の恐怖や苦痛を上手に軽減できれば,出産は,最も満足すべき体験となりうるからである。その意味で,満足すべき出産体験とそれがもたらす自信(誇り)は,分娩直後から始まる新生児との関係とともに,その後の母親役割達成への大きな動機づけとなるだろう。このように,出産体験は,母親としての自己概念の発達にとって重要な意味をもっているのである。
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