巻頭随想
自然のいとなみと進歩
羽仁 説子
pp.9
発行日 1964年5月1日
Published Date 1964/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202745
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私のところにも,先日,赤ん坊が生まれました.進と幸子の長女です.初孫というわけで,私は,おばあさんということになりました.お七夜の近い,赤ん坊のかたわらにすわって,父親に似ているようだし,口もとなどは母親に似ているし,目は私に似ているかもしれないしなどと考えています.もう,おばあさんとよばれなくてはならなくなったとおもうと,なんといってもなさけない気がしますが,心のなかはあたたかです.この子は,私の生きることのできない,21世紀に生きるのです.私も,この子のなかにいっしょに生きる喜びを感じます.
赤ん坊は2月29日,めずらしい日に生まれました.30歳過ぎての初産ですし,一人の職業婦人を嫁にもつ,私もまた職業婦人として,激しい仕事のうえの日々を考えると無事なお産であってほしいという心配がありました.ところが,私が講演に出かけています留守に,助産婦さん,看護婦さんがたの助力で,安産いたしました.若いころ,体操できたえていたことが,プラスだったのだとおもいます.赤ん坊があくびをしたり,くしゃみをしたり,きばったり,ときどきにやりと笑ったりする,まだ,名なしの赤ん坊をそばに,幸子の出産のときの様子をきいて,私が,進を生んだときのことをおもいかえします.
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