Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
司馬遷の障害受容―『史記』の「太公史自序」
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.1182
発行日 2000年12月10日
Published Date 2000/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109378
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『史記』の「太公史自序」(貝塚茂樹・川勝義雄訳,中央公論社)には,司馬遷(前145~前86頃)が自らの創作の秘密を語った有名な一節がある.司馬遷は,李陵事件に連座して宮刑に処せられるという屈辱を受けながら,次のように考えて『史記』の執筆に取り組んだというのである.「むかし,西伯(周の文王)は羑里にとらえられて『周易』を敷衍した.孔子は陳の国・蔡の国で困難をなめて『春秋』をつくった.屈原は故国から追放されて『離騒』の歌を著わした.左丘は失明して『国語』ができた.孫子は脚切りの刑にあいながら兵法を論じた.呂不韋は蜀に左遷されてその著『呂覧』が伝わっている.韓非子は秦にとらわれて説難・孤憤の二篇を書いた.『詩』の三百篇はおおむね聖人賢人が感情の激発によってつくったところである.」
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