Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
エミリー・ブロンテの『嵐が丘』—ケア的人間としてのネリー
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.668
発行日 2024年6月10日
Published Date 2024/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203147
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エミリー・ブロンテ(1818〜1848)が1847年に発表した『嵐が丘』(河島弘美訳,岩波書店)の語り手である家政婦のネリーは,ケア的な人間としての資質を有する人物である.
ネリーは世間から隔絶した嵐が丘に館を構えるアーンショー家に仕える家政婦だが,彼女はリバプールで拾われて来た捨て児であるヒースクリフの人間としての美質に気付いた最初の人間でもある.重い麻疹にかかった子供たちの看病を引き受けることになった彼女は,アーンショー家の子供たちには手を焼いたのに対して,ヒースクリフについては,「看病していてあんなにおとなしい子はおりませんよ」「あのヒースクリフときたら子羊のように辛抱強くて」と,それまで気付かなかったヒースクリフの特徴を評価できるようになっているのである.
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