Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
シェイクスピアの『オセロー』―平等主義的な人間観の系譜
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.791
発行日 1999年8月10日
Published Date 1999/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109041
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シェイクスピアといえば,『ヴェニスの商人』におけるユダヤ人への偏見が有名であるが,1604年に発表された『オセロー』(福田恆存訳,新潮社)には,人種的偏見や性差別に対する批判的な視点を見いだすことができる.
この作品の主人公オセローは,黒い肌を持つムーア人で,一方では「見ただけで身ぶるいの出る,その黒い胸」と,蔑まれながらも,その人柄や能力は,「誠実で,情の深い,高潔な人柄」とか「奴に代る器量人で国事を託すに足る人物など,どこにも得られようはずがない」と,高く評価されている.実際,「志操堅固にして,不時の禍いの放つ矢弾に不死身を誇った勇者」オセローは,トルコ軍討伐の将軍に任ぜられ,見事その大役を果たすのであって,ヴェニス随一の美女デズデモーナが彼と結婚するのも,「オセローの真の姿はその心にこそ,その名誉と雄々しい働きとに身も心も捧げた私」と,彼の価値を内面的なものに見いだしたがためである.
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