Japanese
English
特集 複雑性PTSDの臨床
文学と複雑性PTSD—『八つ墓村』・『拳銃』・『嵐が丘』
The persons with complexPTSD described in “YATSUHAKAMURA”・“THE REVOLVER”・“WUTHERING HEIGHTS”
髙橋 正雄
1
Masao Takahashi
1
1筑波大学
1University of Tsukuba, Ibaraki, Japan
キーワード:
複雑性PTSD
,
complex PTSD
,
虐待
,
abuse
,
DV
,
domestic violence
,
愛着障害
,
attachment disorder
Keyword:
複雑性PTSD
,
complex PTSD
,
虐待
,
abuse
,
DV
,
domestic violence
,
愛着障害
,
attachment disorder
pp.1183-1189
発行日 2023年8月15日
Published Date 2023/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405207061
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抄録
横溝正史の『八つ墓村』とエミリア・バサンの『拳銃』,エミリー・ブロンテの『嵐が丘』という3つの作品に,複雑性心的外傷後ストレス症という観点から検討を加えた。『八つ墓村』の鶴子は,後に大量殺人事件を起こす要蔵に監禁されて死を恐怖するほどの暴行を繰り返されたために村を出奔するものの,その後何年も抑うつ的な状態が続き,外傷体験を想起させる話題を避けたりフラッシュバック様の発作を起こしている。また,『拳銃』には夫の嫉妬妄想に基づく執拗な攻撃に晒された女性が夫の死亡後も続く複雑性PTSD的な症状に悩まされる様子が,『嵐が丘』には複雑性PTSD的な状況の世代間伝播やそこからの脱却の可能性が描かれている。特に主人公のヒースクリフが息子を侮辱し脅すような態度をとり続けたために,息子は依存的でありながら人の好意を素直に受け取れないような性格になるなど,『嵐が丘』は複雑性PTSDやアタッチメント症とパーソナリティ症の関係を示唆しているという点でも先駆的な作品である。
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