Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「僕が跳び跳ねる理由」—当事者主体の自閉症論の扉が開く
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.815
発行日 2021年8月10日
Published Date 2021/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202295
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自閉症当事者・東田直樹が13歳で執筆した『自閉症の僕が跳び跳ねる理由』は,34か国以上で出版され117万部を超える世界的ベストセラー(2021年3月時点).同書の東田の言葉は,会話のできない5人の自閉症者にフォーカスしたドキュメンタリー「僕が跳び跳ねる理由」(監督/ジェリー・ロスウェル)を生み出した.
自閉症者には,独特な「こだわり」,「奇異」な振る舞い,パニックなどがある.東田は,自閉症者を代表しているわけではないと断りつつ,これらの理解されにくい行動の理由を詩的ともいえる筆致で紡ぎ出す.たとえば,欲しいものを人の手を使って取る「クレーン現象」は,<手が物をつかむシーンを見て再現>という戦略ゆえのこと.テレビのコマーシャルに魅かれるのは,自分の知っているものを見ることが嬉しいからであり,手のひらをひらひらさせるのは,光を気持ちよく取り込めるからである.跳び跳ねは,何かの折の体の硬直への対処法として,縛られた縄を振りほどくようなものであり,気持ちを空に向けるもの.本作は,かくのごとく自閉症者の内面世界を代弁する東田の姿勢に共鳴,呼応したもの.
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