特集 「発達障害」は当事者に聞け! 新時代の「知」を切り開く人たち
—当事者発信と科学研究—自閉症論の領域を中心として
狩野 祐人
1,2
1慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程
2独立行政法人日本学術振興会
pp.7-11
発行日 2024年1月15日
Published Date 2024/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689201224
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科学知と当事者の知の架橋—科学者と患者の二項対立を超えて
近年発達障害領域での当事者発信が、国内外でさまざまな形で発展している。1980年代頃から発表され始めた当事者の手記は増加の一途をたどり、マンガなど形式においても多様化している。ブログ、SNS、動画サイトなどをも通じ発信されるこれらの言葉は、発達障害者であるとはいかなることか、その悩みがいかに解決され得るかなどについての人々の理解を絶えず再形成し続けている。
こうした状況においてとりわけ注目に値するのは、発達障害当事者の声が、科学研究や医療実践においてもその重要性を確立しつつあることだ。このことは、医学において歴史的に当事者が研究を実践する主体として認められてきたわけではなかったことを考えると興味深い。従来の科学では、科学者と患者の関係性は、客観対主観、理性対感情、能動対受動といった二項対立的構図で捉えられてきた。また当事者の持つ経験的データは個別的で主観的な「アネクドート(単なるお話)」に過ぎないとされてきた。
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