Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「アイヌモシリ」—少年の進路に横たわるアイヌの精神文化を継承する道
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.207
発行日 2021年2月10日
Published Date 2021/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202164
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いまを生きるアイヌの少年を主人公とする「アイヌモシリ」(監督/福永壮志).アメリカの白人は,先祖がネイティブアメリカンから土地を奪った歴史を知っているが,福永も多くの日本人も,アイヌという先住民がいたのに,何も知らずに過ごしてきた.これこそ,アメリカで映画制作を学ぶ北海道生まれの福永が,この題材を選択した理由である.
14歳のカントは,阿寒湖畔のアイヌコタンで民芸品店を営む母・エミと暮らしている.カントは中学校の進路面談で,卒業後はここでなければどこでもよい,と答える.ここは小さい町だし,普通でない,というのがその理由.自身の境遇を恨んでいるかのようだ.コタンの生活は,アイヌ文化の一端を商品化することによって成立している.カントにとってコタンに残るという選択は,アイヌ関連の仕事をすることであり,早々に他の可能性を捨てることだ.一方,エミを含め,コタンの大人たちは,押しつけることを避けつつも,カントに継承者としての期待をかけている.
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