回顧と経験 わが歩みし精神医学の道・9
アイヌの比較精神医学
内村 祐之
1,2
1東京大学
2日本学士院
pp.222-229
発行日 1967年3月15日
Published Date 1967/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201170
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北海道大学在任中の出来事のうち,私事として最も大きなものは,昭和5年(1930年),父鑑三が東京で死んだことである。父は,その1年ほど前から心臓病に罹つていたが,この年の正月ごろには心臓発作も加わつて,病勢が進み,ついに3月28日の朝まだき,らんまんの桜花に,みとられるようにして,70年の生涯を閉じたのである。
それはもちろん私にとつて大きなショックであつた。われわれ父子の関係は,最後の10年間を除くと,必ずしも「良き父」と「良き息子」で終始したわけではないが,私は,父の死後数年にわたつて,しばしば父の夢を見た。これは,私の意識下で,父が,いかに大きな印象を私に与えていたかを示すものであつて,私自身,幾たびか,そのことに思い到つて驚いたものである。
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