連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・202
アイヌの口承神謡を日本語に訳した少女
柳田 邦男
pp.750-751
発行日 2023年8月10日
Published Date 2023/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686202470
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いつの頃だったか,私がまだ若かった頃,「銀のしずく ふるふる……」という言葉に出会ったとき,そのメルヘン的な情景が目蓋の裏にすーっと浮かんでくる静謐でゆるやかなリズム感のある美しい文章に心を引かれ,そのフレーズがなぜか記憶に深く刻まれた。その記憶は,いまだに生きているのだが,どんな作品のなかでその文章に出会ったのかは,思い出せない。
ところが,最近1冊の絵本『ユキエとくま』を手にしたとき,突然その言葉が私の目に飛び込んできたのだ。表紙にかけられた帯に,「知里幸恵生誕120年記念出版」と銘打ち,すぐその下に,こう記されているではないか。
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