Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
萩原朔太郎の『虚妄の正義』—病跡学のコペルニクス的転回
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.1230
発行日 2020年12月10日
Published Date 2020/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202115
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昭和4年に萩原朔太郎が発表した箴言集『虚妄の正義』(『萩原朔太郎全集第4巻』,筑摩書房)は,天才の病理性を論じた文章が数多くみられる病跡学的にも興味深い作品である.
例えば,「天才者は,彼の異常なる神経質や,人並みはずれた感受性や,概して他人と異なるところの,人種的の『変り種』であることにまで,生活上の耐えがたい痛苦と悩みを感じている」と,天才は神経質や感受性の鋭さゆえに現実生活で苦難を感じやすいと語っているほか,「天才は特別出来の人間であり,その取扱いにも微妙な注意を要するところの,脆く傷つき易い器物である」と,天才の傷つきやすさにも触れている.
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