The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 11, Issue 2
(February 1977)
Japanese
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1.はじめに
筆者らが関与している東京都補装具研究所小児切断プロジェクトでは,昭和51年10月30日現在,小児切断の被験者は102名である.そのうち筋電義手の適応範囲と考えられる前腕切断者,手関節離断者,手部欠損者は53名である.彼らが主に装着しているのは装飾義手(28名)で,能動義手は極めて少ない.(現在装着中2名,過去に装着した経験のある者5名)能動義手の使用頻度が低いのは,国産の小児用能動ハンドがないことも原因していると思われるが,義手に要求される要因が機能よりも外観に重きが置かれていることもある.成人の場合も同様であるが,成人では特定の使用範囲を設定して,その範囲内で能動義手や作業用義手を使うことがある.このような場合には筋電義手が有効に利用される可能性があるが小児の場合にも通用するかは不明である.
小児切断者自身はともかく,彼らの両親の動力義手に対する期待は非常に高いのであるが,期待に答えられる可能性のある動力義手で市販されていて入手可能なものは,西ドイツのOtto Bock社が出している筋電義手で,Myobock Z6の小児用があるのみである.この義手が期待に答えられるものか,高価な玩具なのかを実際に被験者に装着して探ってみる必要がある.単に工学的な観点からこの義手で何がどの程度行えるかを把握しても義手を利用する場や期待との関係を検討しなければその解答は得られないであろう.
このような背景のもとに我々は,「小児用筋電義手の臨床適応に関する研究」を50年度を初年度として3カ年で展開している1).本研究の目的は,①小児切断者にとって筋電義手が,いかなる意味,役割を持ち得るかを考察すること,②小児切断者の大部分を占める(被験者102名中66名が先天性切断者)先天性切断者への適応の可能性を探ること,③訓練プログラムの確立,④筋電義手用ソケットおよび義手の適合法の検討である.ここでは主に③について述べる.
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