Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「敬愛なるベートーヴェン」―“障害”は芸術に力を与え,芸術は“障害”を無化する
二通 諭
1
1石狩市立花川南中学校
pp.729
発行日 2007年7月10日
Published Date 2007/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101006
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ベートーヴェンはピアノの音を振動で感じることができる伝音性難聴だったのではないかと推測されている.ともかく,聴覚障害の部分が強調される偉人だが,「敬愛なるベートーヴェン」(監督/アニエスカ・ホランド)を見る限り,「社会性の障害」のほうが顕著だ.タイトルをもじるなら“敬遠したくなるベートーヴェン”の世界がそこにある.
言動,行動ともに人の迷惑省みずだ.癌に冒された音楽出版業者を思いやりのかけらもなく怒鳴りちらし,他者の作品に対するけなし方もオナラの音に喩えるなど醜悪極まりない.時折,室内で水浴びをするが,水は階下に滴り落ち,下の住人は怒り心頭.さらに,今ならセクハラ行為だが,若き女性にお尻を見せて喜ぶ.野獣性と幼児性に満ちた振る舞いだ.
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