Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
平均寿命の延長に伴い高齢者の割合が増加し,大腿骨近位部骨折を中心とした脆弱性骨折の発生は年々増加している.わが国において,大腿骨近位部骨折の患者件数は,2007年は15万件であったが,2020年には25万件,2042年には32万件にまで増大すると予測されている1).大腿骨近位部骨折を生じると,日常生活動作(activities of daily living;ADL)や生活の質(quality of life;QOL)の低下のみならず,生命予後にも影響を及ぼす.2013年の厚生労働省の国民生活基礎調査において,介護が必要となる原因をみると,男性では脳血管疾患(28.4%),認知症(13.3%),高齢による衰弱(10.3%)に次いで骨折・転倒は4位(5.6%)であった.それに対して,女性では骨折・転倒は認知症(17.1%)に次いで2位(15.1%)であった2).
地域医療は従来の施設完結型から現在は地域完結型医療へと変わりつつあるが,まず1990年代に医療が安全かつ適切に実施されるためのシステムとして疾患別のクリニカルパスの概念が日本に導入され,急速に広がった.また,2006年度の診療報酬改定により大腿骨近位部骨折地域連携パスが新たに新設され,各地域で病院間の医療連携が構築された.これにより計画管理病院(急性期)から入院連携病院(回復期)へ相互の情報が共有され,連携医療機関が患者に切れ目のない均質の標準化された効率の良い医療を提供することが可能となった.また,地域連携クリニカルパス(以下,連携パス)を導入することで在院日数の短縮や医療費削減も期待された.
北九州市においても産業医科大学を事務局として,大腿骨近位部骨折地域連携パス委員会を設置し,連携パスの運用を開始した3).本稿では,その詳細について報告する.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.