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はじめに
わが国では急速に高齢人口が増加し,65歳以上の老年人口の割合は2000年の17.4%から,2014年には25%になると予測されている1).高齢化に伴い大腿骨近位部骨折の発生率も急増することが予想される.大腿骨近位部骨折全国頻度調査成績によると,患者数は1987年からの10年間で1.7倍,1992年からの5年間で1.2倍と報告されている2).現在,大腿骨近位部骨折の発生率に関する報告によると,国内で年間新たに約9万人の大腿骨近位部骨折患者が発生していると推定され3),2025年にはさらに2倍以上に増大すると予想されている4).
大腿骨近位部骨折患者の急激な増加は,骨折患者の歩行能力の低下をはじめとするADL(activities of daily living)の低下を引き起こすだけでなく,転倒に対する恐怖感などによるQOL(quality of life)の低下も問題となる.さらに社会的には医療費の増加および介護費用の増大を引き起こすことになる.
わが国では長期間の経過が観察された報告はほとんどない.筆者らは,1992年1年間に大腿骨近位部骨折を受傷し,名古屋大学関連病院74病院で治療を受けた1,169人を登録した.その内,インフォームド・コンセントが得られた936人に対し,10年間毎年質問紙表を送付し,生存,歩行能力,居住地をprospectiveに調査した.死亡を確認,または10年間経過観察し得たのは753人(男性191人,女性562人:平均年齢78歳)であった.大腿骨近位部骨折は高齢者が多く,背景がさまざまである.この骨折の治療計画を立てるのに,長期の予後,経過を知ることは役に立つ.筆者らの行った大腿骨頸部骨折患者の10年間のprospective studyの生命予後,歩行機能予後の推移,また,それらに影響を与える因子について述べる.
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