連載 目標を設定した在宅リハビリテーション
大腿骨近位部骨折
大野 重雄
1
1小倉リハビリテーション病院
キーワード:
大腿骨近位部骨折
,
訪問リハビリテーション
,
生活の再建
,
転倒予防
Keyword:
大腿骨近位部骨折
,
訪問リハビリテーション
,
生活の再建
,
転倒予防
pp.731-733
発行日 2016年8月10日
Published Date 2016/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200690
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大腿骨近位部骨折は関節包内骨折である大腿骨頸部骨折と関節包外骨折である転子部骨折に大別される.わが国における全国調査によると,2007年の大腿骨近位部骨折の推計発生数は男性31,300人,女性116,800人,計148,100人であった.発生率は40歳から年齢とともに増加し,70歳を過ぎると,急激に増加しており,高齢者での発生は男性より女性が高い1).今後,2020年には約25万人,2030年には30万人,2042年には約32万人の大腿骨近位部骨折が発生すると推計されている2).
また,転倒・骨折は要介護・要支援の大きな要因で,2010年国民生活基礎調査の概況によると,要支援の約12.7%,要介護の約9.3%を占めている.90歳以上の要介護者では脳卒中の1.5倍もが転倒・骨折により要介護状態に陥っている.受傷後,適切な手術を行い,適切な後療法を行っても,すべての症例が受傷前の日常活動レベルに復帰できるわけではない.日本整形外科学会の報告によれば,大腿骨頸部骨折の日常生活自立度は,発症前Jランク56.2%,Aランク32.2%であったものが,発症1年後Jランク38.9%,Aランク26.5%にそれぞれ低下していた3).このことは受傷時平均年齢が78.7〜79.6歳であり,80〜89歳の患者が全体の46%を占める4)ことも一因として挙げられ,高齢者であるための合併症や廃用性の機能低下などにより,機能回復やその後の能力維持の困難さが示唆されている.
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