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はじめに
脳卒中片麻痺患者において実用手を獲得するのは,リハビリテーション病院入院患者の約30~40%と言われている.実用性の獲得には麻痺肢における手指の分離運動の出現が必要であり,発症3か月以内のStroke Impairment Assessment Set(SIAS)のfinger function testが3点以上であれば実用手の獲得の可能性は高い1).ただし,分離運動まではいかなくとも,手指の集団伸展が可能となると,実際の生活において,補助手として使用できる場面が非常に増える.よって共同運動レベルの患者ではまず手指の伸展の獲得を,さらに伸展運動が可能な例では分離運動の獲得を目指すことにより,上肢の実用度を上げることができる.
しかしながら,片麻痺患者ではいわゆる健側上肢が存在するため,大抵の場合は健側上肢による代償によりほとんどのADL(activities of daily living)を行うことが可能なため,入院期間の短縮や,能力低下へのアプローチ偏重により,利き手交換のみが行われ,麻痺側上肢機能障害へのアプローチが十分なされておらず,いわゆる学習された不使用「learned non-use」が作られているとの指摘がある2).
近年,成人脳における可塑性の報告などの最新の神経学的知見に基づき,中枢神経障害による機能障害への治療が脚光を浴びつつある.とくに,脳卒中片麻痺患者の上肢機能障害への治療においてはconstraint induced movement therapy(CI療法),装具,神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation;NMES),反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation;rTMS),経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation;tDCS),robot therapyなどの治療法が開発され,多く報告されている.本稿ではこれらの新しい脳卒中片麻痺の上肢機能障害へのアプローチを中心に概説することとする.
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