特集 バランス再考
バランス障害に対するニューロモジュレーション
松田 雅弘
1
,
万治 淳史
2
,
網本 和
3
Tadamitsu Matsuda
1
1城西国際大学福祉総合学部理学療法学科
2埼玉みさと総合リハビリテーション病院
3首都大学東京大学院人間健康科学研究科
キーワード:
バランス障害
,
非侵襲的脳刺激療法
,
NIBS
,
経頭蓋直流電気刺激
,
tDCS
,
反復経頭蓋磁気刺激
,
rTMS
,
補足運動野
,
SMA
Keyword:
バランス障害
,
非侵襲的脳刺激療法
,
NIBS
,
経頭蓋直流電気刺激
,
tDCS
,
反復経頭蓋磁気刺激
,
rTMS
,
補足運動野
,
SMA
pp.801-808
発行日 2018年9月15日
Published Date 2018/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551201299
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はじめに
バランス障害に対して古典的に効果が認められている運動療法は数多く,筋骨格系・感覚系・神経系に対するアプローチが存在する1).Horakら2)はバランス制御にかかわる要因を生体力学的制約,安定性限界と垂直性,予測的姿勢制御,姿勢反応,感覚指向性,歩行安定性に分けて評価手法を確立した.これら各要因を原因としたバランス障害に対するアプローチ方法はおのおの異なる.
バランス機能にかかわる神経機構も明らかになってきた.随意運動の発現には上下肢遠位筋優位に制御する外側運動制御系(四肢の運動)と,体幹および上下肢近位筋に優位な内側運動制御系(姿勢制御)が大脳基底核・視床を介して密接に関与し,特に姿勢制御に関与する神経機構には内側脊髄路系が関連している3).内側運動制御系の運動関連領野(補足運動野・運動前野)は豊富な皮質-網様体投射を介して網様体脊髄路を動員し,その経路は姿勢制御に重要な役割を果たす3).また,大脳基底核・小脳も姿勢制御に密接なかかわりをもっている.大脳基底核の障害として代表的なパーキンソン病(Parkinson disease:PD)では,歩行障害や姿勢調節の異常など運動機能障害が生じる.また,体幹機能を司る小脳が起因となって失調様の症状により,姿勢制御が困難となる.
近年,これらのネットワークまたは中枢神経の領域に物理的な刺激を加え,その働きを修飾する手法(ニューロモジュレーション)による研究が発展し神経局在・ネットワークの解明が進むとともに,広く臨床研究が展開されるなかで,バランス障害の改善に関する報告が数多くなされている.
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