Japanese
English
- 販売していません
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)は,図1のように経頭蓋磁気刺激装置と刺激用コイルを使用して,Faradayの電磁誘導の法則に基づいて,経頭蓋的に,脳を刺激する技術である(neurostimulation).非侵襲的に刺激できるため,神経生理学的検査に用いられているが,1994年に規則的な刺激を繰り返して行う反復性経頭蓋磁気刺激(repetitive TMS:rTMS)において反復性刺激終了後も神経の興奮性変化が一定時間持続することが明らかになり,それから臨床応用が試みられるようになってきた1).われわれは2008年から脳卒中後遺症である上肢麻痺,失語症に対してrTMSと集中的リハビリテーションを組み合わせた治療(NovEl intervention Using Repetitive transcranial magnetic stimulation and Occupational therapy, NovEl intervention Using Repetitive transcranial magnetic stimulation and One-to-one training:NEURO®)を開始し,現在は,上記に加えて下肢麻痺,嚥下障害,高次脳機能障害,痙縮に対して施行している.なお,保険収載をされた,うつ病領域のrTMSは,東京慈恵会医科大学の鬼頭伸輔先生が中心になって精神医学講座グループが対応している.
rTMSは,脳活動を変化させることができるので,脳卒中後遺症や精神神経疾患の治療に応用(neuromodulation)されている.代表的な刺激頻度である10Hzは,脳活動に促進的に作用し,1Hzは脳活動に抑制的に作用する.刺激強度は1.5〜2.0Teslaあり,刺激深度1.5〜3.0cmであるとされている2).
2014年に引き続き2020年に欧州からrTMSのガイドラインが出された3, 4).表1にLevel AとLevel Bに推奨されているものを記載する.Neuromodulationを利用した治療に多く用いられていることが理解できる.脳卒中後遺症の項目で2014年と2020年のガイドラインの違いとして,2014年にLevel Bだった慢性期の上肢麻痺の改善に対する健常側運動野低頻度rTMSがLevel Cになった.亜急性期の上肢麻痺の改善に健常側運動野低頻度はLevel CからLevel Aになった.患側運動野の高頻度rTMSは,亜急性期でLevel CからLevel Bになった.非流暢失語に対しての右下前頭回の低頻度rTMSが圏外から2020年ガイドラインではLevel Bに推奨された.
今回本稿では,東京慈恵会医科大学にて,治療として反復性経頭蓋磁気療法を用いている精神医学講座グループとリハビリテーション医学講座グループの知見を中心に報告をする.
Copyright © 2021, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine. All rights reserved.